コロナ禍給食「黙食」は子どもたちの食事にどのような影響を与えるのか?
新型コロナウイルスの感染が拡大したことにより学校給食でも「黙食」が当たり前になりました
では、学校給食における「黙食」は子どもたちにどのような影響を与えるのか?
考察をまとめました
- コロナにより新しくなった学校給食の衛生管理マニュアル
- コロナにより給食に変化があった子どもたちはどれくらいいるのか?
- 給食の変化により子どもたちの感情はどのように変化しているのか?
- 「黙食」は子どもたちにどのような影響を与えるのか?
コロナにより新しくなった学校給食の衛生管理マニュアル
文部科学省が2021年4月に提示した『学校における新型コロナウイルス感染症 に関する衛生管理マニュアル 』では、給食に関して下記のようにガイドラインが記載されている
会食に当たっては、飛沫を飛ばさないよう、例えば、机を向かい合わせにしない、 大声での会話を控えるなどの対応が必要です。
生徒同士での昼食や、教職員が同室で昼食をとった場面での感染が疑われる事例も生じていることを踏まえて、飛沫を飛ばさないような席の配置や、距離がとれなければ会話を控えるなどの対応を工夫して ください。食事後の歓談時には必ずマスクを着用します。
生徒数が決まっている中で、机の席数・距離感を変えることは難しいので、必然的に会話を控える方向にならざるを得えません
ではコロナ禍で給食に変化があった子どもたちはどれくらいいるのでしょうか
コロナにより給食に変化があった子どもたちはどれくらいいるのか?
ニフティが2021年5月、主に小学5年生〜中学1年生の3,954人を対象に「給食」に関することをテーマに調査した結果によると、回答者の約8割がコロナにより給食の形式が変わったと回答しています
変化した内容は「会話禁止になった」「グループで食べなくなった」とあります
中には「配膳時間を短くするためにメニュー数が少なくなった・お弁当になった」という回答もありました
給食の変化により子どもたちの感情はどのように変化しているのか?
では、給食の変化により子どもたちの給食への意識はどのように変化したのでしょうか
ニフティの調査によると、給食に変化があった約半数の子どもたちがコロナ前に比べて給食時間が「楽しくない」と回答しています
楽しくないと回答した理由は「お話できない」ことが大半でした
「黙食」は子どもたちにどのような影響を与えるのか?
今回は4つの観点より影響を考察していきたいと思います
食欲が減ることにより、必要な栄養素摂取機会が減少する可能性
食事の源は「食欲」で、食欲は下記の順で生まれます
胃が空っぽになって血糖値が下がると視床下部にある摂食中枢が刺激を受け、「食べることって楽しそう」「あの料理おいしそう」という感情が脳を刺激し、食欲が生まれます
胃が空っぽになっていても「おいしいそう」「楽しそう」という感情がわかなければ食欲はわきません
また、食欲はこれまで培ってきた食体験や知識によっても左右されます
おいしく、楽しい食体験を繰り返し、それを積み重ねることが、子どもたちの食べる意欲を育みます
「食べたい!」という気持ちがあってこそ栄養素摂取が可能になります
1日3食のうち、1食が学校給食による「黙食」で「楽しい食体験」を阻害していることによる食欲が減少する可能性があります
コミュニケーション機能・マナー習得が半減
共食は親密さを深めるコミュニケーション機能も果たしています
ニフティの調査でも食事中に「新しい友だちと話すことが難しい」という回答があり、コミュニケーション機能が失われていることがわかります
また人と食事をとることで、「人の迷惑にかからないように食べる」「不快感を与えないようにする」などといった食事に関するマナーを習得できます
人と食べることで学べるマナーを習得する機会が減っている可能性があります
「おいしさ」が半減する可能性
おいしさは、味覚、嗅覚、触覚、視覚、聴覚の五感のほか、食べる時の気持ち、一緒に食べる人、食べる場所も影響します
「みんなで食べると美味しい」という言葉は真実で、黙食により「おいしさ」が半減する可能性があります
黙食が与えるメリットも存在する?「味覚教育」
神奈川工科大学健康医療科学部管理栄養学科教授の饗場直美さんは黙食が与える味覚教育のメリットを伝えています
「黙食」で前を向いて食べることを活用して、おいしい給食をおいしく感じながら食べる体験とする「味覚教育」は今こそすべきだと思います。
味覚教育とは食べ物の食べ方の基本で、具体的には甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の5つの基本味をよく噛んで味わいわかるという教育です。味覚だけではなく五感を使って最終的においしいと統合させることが本当の意味で味わうということですが、普段なかなかできないことです。「黙食」で食にしっかり向き合える今、取り組めるチャンスであり、栄養教諭の出番だと思います。
引用:
「黙食」によるデメリット・メリットを理解して、可能であれば不足部分を家庭で補えればいいかもしれません